ターゲットの嗜好や行動・閲覧履歴にもとづいたアプローチで行動を喚起するOne to Oneマーケティングは業種・規模問わず多くの企業が取り入れています。
なかでも既存の企業資産をOne to Oneマーケティングに活かすことで大きな成功をおさめたのが、ファミリーレストラン「ガスト」を全国展開するすかいらーくの事例です。
すかいらーく2014年上半期の決算で、広告宣伝費を対前年比10%以上削減したうえで、前年比約3%の売上拡大を達成しました。その要因の1つが、同社が自主開発したスマートフォン向けの「ガスト」公式アプリと言われています。
6ケ月間で300万ダウンロードを達成した「ガスト」公式アプリ
すかいらーくが2014年にリリースした「ガスト」公式アプリ。その特徴は、配信する内容や時期がすべて個々のユーザーにあわせてパーソナライズされていること。
アプリの主な機能は来店を促すクーポンの配布ですが、年齢・性別、居住地、子どもの有無といったアカウント登録時の情報をもとに、クーポンの種類や配布時期が選定されます。
例えば、子どもがいる主婦のユーザーには子ども向けのセットメニューのクーポンを配布したり、お酒のクーポンの配布対象から未成年を除外したりするなど、生活環境やユーザー個々の条件まで考慮された機能が評判を呼び、このアプリはリリースから約6ヶ月で300万ダウンロードを達成しました。
こうしたパーソナライズをする場合、ターゲットの属性や嗜好と、配信する内容のマッチングが重要なのは言うまでもありません。いくらパーソナライズを施してもマッチングの精度が低ければ、ユーザーの行動につながらないばかりか、企業に対するマイナスイメージにつながる可能性もあります。
この事例で注目したいのは、マッチング鮮度を上げるため、配信するクーポン選定をする仕組みに「ガスト」の実店舗に蓄積されたPOSデータを活用していること。
通常POSデータはフランチャイズ店舗の売上把握などに利用されるものですが、すかいらーくはそれをユーザーの行動データとして捉え、綿密に分析することによって、ターゲットの属性・嗜好にあわせて最適なクーポンを配信するロジックを確立しました。
One to Oneマーケティングで成果をあげるためには、ただトレンドを追いかけて取り入れるのではなく、すかいらーくのように、「これまで企業が積み上げてきた情報資産をどう活かすか」という視点で取り組んでみるのも1つの有効策なのかもしれません。